「地球最後の楽園」と呼ばれるほど自然豊かなパプアニューギニア。そこで獲れるコーヒーは美味しいに決まっている。
そう思った人はいませんか?
その通りです。パプアニューギニアのコーヒーは美味しいんです。浅煎り〜深煎りまで焙煎の対応レンジは広く、どんな方にも受け入れられるシンプルな美味しさが魅力です。
今回はそんなパプアニューギニアのコーヒーがなぜ美味しいのかその魅力に迫ってみたいと思います。
具体的には以下の順にお話させて頂きます。
・味わいの特徴
・パプアニューギニアの歴史
・今後の問題点
味わいだけでなく、コーヒーにまつわる歴史や生産背景も含めてお伝えしようと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
さぁ、ご一緒にパプアニューギニアのコーヒーの旅へ出発しましょう!
そもそもパプアニューギニアってどこ?
みなさんパプアニューギニアがコーヒー産出国であることを知っていますか?それ以前に「そもそもどこにある国なの?」って方も多いと思います。
パプアニューギニアは日本の南方の国、オーストラリアの上です。
基本データ
首都 | ポートモレスビー |
面積 | 約46万km2(日本の約1.25倍) |
人口 | 9,949,437人(2021年、世界銀行) |
言語 | 英語(公用語)のほか、ピジン英語、モツ語等を使用 |
宗教 | おもにキリスト教、祖先崇拝等伝統的信仰も |
コーヒー生産量 | 世界第25位(40,800トン)※2021年のデータ |
栽培品種 | アラビカ種94%:ロブスタ種6%ティピカ、アルシャ、ブルボンなど |
※出典 : Global Note
パプアニューギニアは日本の約1.25倍の国土面積を有し、大小の600の離島からなる島々から構成されています。ニューギニア島東部は標高3000mを越える山脈が東西に連なり国土を分断しています。このような地理的条件の下で、約800万人の人口が居住し、800以上の部族言語を使用しています。主な輸出品は天然資源やコーヒーを含む農産物です。
パプアニューギニアにとってコーヒーは重要な輸出商品であり、国民の大多数にとって主要な収入源となっています。
コーヒーの味わいの特徴は優しい酸味
パプアニューギニアのコーヒーの味わいの特徴は優しい酸味にあります。
焙煎の対応レンジは広く、
・浅煎りだとグレープフルーツを思わせる凝縮された酸味
・中煎りだとリンゴのような甘いフレーバー
・深煎りだと濃厚なコクを感じながらもスッキリとした余韻
このような風味を感じると思います。
もちろん、品種や栽培地域によっても味わいは変わりますが、総じて言うと「どんな方にも受け入れられるシンプルなコーヒー」が魅力です。
これらの美味しいコーヒーはどのように育てられるのでしょうか?さらに深掘りしていきます。
コーヒーの栽培環境は最高
コーヒーの栽培環境としては最高です。コーヒーベルト直下の火山地帯のため、コーヒーが美味しく育つための以下の条件が揃っています。
・ミネラルを含んだ火山性土壌
・標高1,500~2,000mの高地
・熱帯モンスーン気候による雨季と乾季
・平均気温が25℃前後
・豊富な森林
特に、その高い標高による栽培がポイントで一年を通じて昼夜の寒暖差が非常に大きいことから、まるで「一日で一年の気候を繰り返す」ようだと言われています。このような高地で育つコーヒー豆は、冷え込みに対抗するために体内の水分を減らし、代わりに糖分を多く蓄えるようになります。
4つの農園
パプアニューギニアのコーヒーの約 85% が「コーヒーガーデン」と呼ばれる、庭先にコーヒーの木を植える小規模農家によって栽培されています。
残りの15%はプランテーションと呼ばれる大規模な農園。
その中でも4つの農園を紹介させて頂きます。どの農園もコーヒーの栽培に理想とされる、恵まれた環境に分布しています。
・シグリ農園
・ギガバー農園
・ブヌンウー農園
・キンデン農園
特に、シグリ農園とギガバー農園は歴史のある農園として有名です。文化や風俗を反映するだけでなく、恵まれた栽培環境があり、徹底された品質管理にも定評があります。
シグリ農園
シグリ農園は、1950年代の終わりに西部高地ハイランド地方のウァギ・バレー北部に設立された広大な農園です。この農園は標高1,500から1,600メートルに位置しており、大規模ながらも、量より質を重視し、原種に近いティピカ種のコーヒー豆を95%栽培しています。また、収穫は手作業で一粒ずつ行われ、成熟した豆のみが厳選される方法で実施されています。
ギガバー農園
ギガバー農園は、1960年代のジワカ州バンツ近郊に設立されました。標高1,520mほどに位置しており、「高地」と「品質管理」にこだわりを持っています。特にロットの選定に力を入れ、コーヒーの品質を最優先に考え、その年に最高の品質を持つロットを選択しています。これにより、一貫して高品質の製品を提供することが可能になります。
主要なアラビカ品種のティピカに注目
パプアニューギニアではアラビカ種94%・ロブスタ種6%が栽培されており、アラビカ種では主に以下の3つが栽培されています。
・ティピカ種
・ブルボン種
・アルシャ種
注目なのが、ティピカを栽培している点です。
ティピカ種はその優れた風味にも関わらず、病気に対する抵抗力が弱く、生産量も少ないため、他の国々ではあまり栽培されていません。
しかし、パプアニューギニアでは離島の多さから人の移動が限られており、コーヒー栽培に害を及ぼすサビ病の影響が少ないため、この種を栽培することが可能です。その結果、パプアニューギニアは貴重なティピカ種のコーヒー生産地の一つとなっています。
等級(グレード)はAAが最高
等級(グレード)は豆の大きさと欠点豆の数で決まります。
等級 | 豆の大きさ(スクリーンサイズ) |
AA | 6.95mm以上(欠点豆がない) |
A | 6.75mm以上(欠点豆がない) |
B | 6.55mm以上(欠点数が少ない) |
AB | AとBの混合で、Aの混合率が50%以上 |
C | 5.95mm以上(欠点数が比較的少ない) |
PB | ピーベリーやそれに類する丸豆 |
等級はAAが最高です。
例えば、最高ランクのコーヒーの場合は「パプアニューギニア シグリ AA」のように、コーヒーの種類に等級がつけられます。
精製方法は水洗式(ウォッシュト)が主流
パプアニューギニアの伝統的な精製方法は水洗式(ウォッシュト)です。
ウォッシュト製法のコーヒーは、酸味が際立つのが特徴です。発酵と洗浄の工程によって、豆の表面に残る果肉や粘液が取り除かれるため、コーヒーの風味がクリアになり、酸味がより強調されます。
焙煎度を深くしても後味がスッキリとした印象を持つのは栽培環境もそうですが、水洗式の要因も大きいかもしれません。
コーヒー栽培の歴史と生産背景
1930年代パプアニューギニアのコーヒー栽培は、ヨーロッパの宣教師がジャマイカのブルーマウンテン種の苗を持ち込んだことにより始まります。
1950年代には、本格的なコーヒー栽培が開始され、特に有名なシグリ農園もこの時期に開拓されました。
1975年にオーストラリアから独立した後、パプアニューギニアは自国の方法でコーヒー栽培を続け、現在まで高品質なコーヒー豆を生産しています。
独立前は外国人所有のプランテーション(大規模農園)が主でしたが、現在は生産の約15%がプランテーションで、残りの85%は小規模農園で行われており、2021年の生産量は57,42,480トン(世界第22位)に達しています。
パプアニューギニアのコーヒーは各国の経済援助や技術支援などにより、栽培開始からわずか40〜50年で国際的な知名度を獲得しています。
日本との関係は深い、40年以上の仲
実は、日本との関係は深いのです。
日本とパプアニューギニアの外交関係は、パプアニューギニアが1975年に独立した時に始まりました。日本は独立を早期に承認した国の一つで、以来、40年以上の長きにわたり関係を築いています。
2015年には、両国は国交樹立40周年を祝いました。この間、日本は主に政府開発援助(ODA)を通じて、パプアニューギニアの経済発展に大きく貢献してきました。
貿易の面では、パプアニューギニアにとって日本は重要な相手国の一つです。オーストラリア、ドイツ、米国と共に主な貿易相手国の一つであり、パプアニューギニアの全輸出額の約10%以上を占めています。
これは、最大の貿易相手であるオーストラリアに次いで、パプアニューギニアにとって第2位の貿易相手国の位置づけです。
参考:外務省ODA報告資料
パプアニューギニアが抱える問題
パプアニューギニアにとってコーヒーは重要な輸出商品であり、国民の大多数にとって主要な収入源です。そのためコーヒーを調べるとその国が抱える問題が見えてきます。
今回気になるトピックスは2つ「インフラ未整備問題」と「女性への不平等問題」です。
これらを解決してもっと美味しいコーヒーを飲みやすく、さらにはコーヒーで世界平和を実現できる世の中だといいな〜と思っております。
「インフラ未整備問題」
パプアニューギニア国内では離島や山間部が多く、運輸インフラをはじめ、電力、水などの基礎インフラが未整備なため、社会サービスのアクセスが妨げられ、所得向上の阻害要因となっている。特に運輸インフラの未整備により物資の輸送コストがかかり、物価高の要因となっている。
参考:国別開発協力方針 別紙. 対パプアニューギニア独立国 事業展開計画書
つまり、コーヒーも例外ではなく、他の農作物と一緒で物資の輸送コストが増大し、結果として商品の物価高へとつながっています。
「女性への不平等問題」
女性の活躍が注目されており、ウクニ族の女性グループからなる小規模農家さんが丁寧に作ったコーヒー豆があります。
グループのメンバーはNGOなど各団体によって支援を受け、素晴らしいコーヒーを栽培していますが、これら女性の活躍が注目される背景には「女性への不平等問題」があります。
パプアニューギニアはジェンダー不平等指数(GII)で148カ国中134位にランクされており、ジェンダー平等と男女平等の促進のために設定された2015年のミレニアム開発目標目標を達成できなかった国の一つであります。
パプアニューギニアのコーヒー推進団体(CIC)も女性活躍への問題解決に力をいれている現状です。
参考:Kaffe Hygge/ウクニ族の女性たちのコーヒー豆より
参考:国際NGOプラン・インターナショナル
まとめ
ここまでのまとめです。
パプアニューギニアコーヒーの特徴
・浅煎りだとグレープフルーツを思わせる凝縮された酸味
・中煎りだとリンゴのような甘いフレーバー
・深煎りだと濃厚なコクを感じながらもスッキリとした余韻
パプアニューギニアコーヒーの魅力
・どんな方にも受け入れられるシンプルなコーヒー
豆の格付け(グレード)
・AA > A > B > AB > C
注目の農園
・シグリ農園
・ギガバー農園
注目の品種
・ティピカ
伝統的な精製方法
・水洗式(ウォッシュト)
パプアニューギニアが抱える問題
・インフラ未整備問題
・女性への不平等問題
最後まで読んでいただきありがとうございました。