スマトラ式とは、その名の通りインドネシアのスマトラ島で採用されているコーヒーの精製方法の一つです。
この製法で作られたコーヒーは、スパイシーでハーブのような風味が特徴とされ、多くのコーヒー愛好者から愛されています。
その深い味わいと複雑なアロマは、一度飲んだら忘れられない魅力を持っています。
この記事では、スマトラ式製法、特にその独特なスパイシー&ハーブのような風味に焦点を当てて解説します。
スマトラ島の地理的な特徴から精製プロセス、メリット・デメリットまでこのコーヒーの全てを網羅しています。
スマトラ式コーヒーの風味を深く理解することで、コーヒー選びや楽しみ方が一層豊かになります。
コーヒーをより楽しむ新たな方法を発見しましょう!
スマトラ式とは
スマトラ式とは、インドネシアのスマトラ島で採用されているコーヒーの精製方法の一つです。
他の精製方法と違う最大のポイントは
コーヒー豆を完全に乾燥させる前に脱穀することです。
一般的な方法では、豆が完全に乾燥した後に脱穀しますが、スマトラ式では豆がまだ50%ほど水分を残している状態でこの作業を行います。
この製法は他の製法と比べても特徴的で、
これらがスマトラ式コーヒーの独特なスパイシーでハーブのようなエキゾチックで特徴的な香味を生み出しています。
日本ではその特有の風味が長い間多くのファンを魅了しているのです。
主な採用国
主な採用国はインドネシア・パプアニューギニア
世界有数の大きな島のひとつスマトラ島
スマトラ島は、インドネシアに属する世界有数の大きな島の一つです。
スマトラ島は高温で降水量が多い地域です。
年間で約200日も雨が降るため、明確な乾季がありません。
また、コーヒー栽培に適した山々が連なり標高が高い山岳地帯でもあります。
スコールが多いため長期間乾燥するのが難しく、全体の乾燥時間を短縮させることができる「スマトラ式」が採用されています。
スマトラ式は予備乾燥と本乾燥の2つの工程に分けて作業を進めます。
急なスコールに対応し、全体の乾燥時間を短縮させるためです。
スマトラ式製法の特徴 (小農家とコレクターの協力)
スマトラ式製法は、小農家とコレクター(集買業者)という二つの主要な担当者が密接に協力することで成り立っています。
小農家の方々は自分たちで収穫〜予備乾燥まで行い、
コレクター(集買業者)は脱穀〜本乾燥を担当します。
スマトラ式コーヒー製造のプロセス
担当者 小農家
プロセス 完熟豆を手摘みで収穫
特記事項 各農家が独自に果肉除去・発酵水洗いを行う
担当者 小農家
プロセス ミューシレージが除去されたパーチメントを乾燥
水分値 約40%
特記事項 この状態の豆は「GABAH」と呼ばれる
担当者 小農家 & コレクター(集買業者)
プロセス GABAHを市場に持ち込み、コレクターが買い取る
特記事項 品質の判断が難しく、信用関係が重要
担当者 コレクター
プロセス GABAHを脱穀し、二次乾燥
特記事項 この状態の豆は「LABU」と呼ばれる
担当者 コレクター
プロセス 水分値を13-15%に調整し、選別を行う
特記事項 この状態の豆は「ASALAN」と呼ばれる
担当者 生産者
プロセス 品質劣化の可能性のある豆を一粒ずつ取り除く
特記事項 豆が柔らかい状態での脱殻を行うため、豆の先が裂けることがある
水分を多く含んでいる状態の豆は、傷つきやすく、欠けやすい
豆がまだ水分を多く含んでいる状態でパーチメントの脱殻をするスマトラ式ではミルで処理する際に豆の先端が割れることがよくあります。
この割れた部分は品質が低下しやすく、機械での選別は困難です。
そのため、一つ一つ手で選ぶ「ハンドピック」が必要とされます。
このように、スマトラ式コーヒーの品質は、熟練したピッカーによって大きく影響を受けます。
スマトラ式の3つのメリットと3つのデメリット
スマトラ式の特徴をメリットとデメリットにしてまとめました。
3つのメリット
1.独特の風味
スマトラ式は、コーヒー豆にスパイシーでハーブのような風味を与えます。この独特の風味は、多くのコーヒー愛好者に愛されています。
2.速い乾燥プロセス
この製法では、パーチメントを早い段階で脱穀するため、乾燥プロセスが速くなります。これは、多雨の地域で有用です。
3.ブランディング
スマトラ式は地域の伝統的で独特な製法であり、インドネシアのコーヒー豆、特にマンデリンの効果的なブランディングにも繋がっています。
3つのデメリット
1.品質のばらつき
この製法では、乾燥プロセスが速いため、品質にばらつきが出やすいです。
2.保存性に問題
外皮を早く取り除くと、豆が外部環境(雨・湿気・温度)に影響を受けやすくなる場合があります。これにより、保存性が低下する可能性があります。
3.熟練した技術が必要
スマトラ式は品質管理が非常に難しい精製方法です。小農家の方々そしてコーヒー豆を集めるコレクター、一つ一つ手で豆を選別するハンドピッカーなどそれぞれ熟練した技術が必要です。
スマトラ式のコーヒー「マンデリン」
伝統的な製法と現代の製法では、最終的なコーヒーの風味に違いが出ます。
インドネシアの人気銘柄「マンデリン」を作るためにはスマトラ式が欠かせません。
特有の風味を強調するためだけではなく、さらにはその独自性からブランディングに大きく効果を貢献しています。
アーシーな風味とは
スマトラ式のコーヒー、特にマンデリンではアーシーな風味と表現されることがよくあります。
Earthy(=地球)大地や自然などを思わせる味・土っぽさなどの自然な要素に似た香りや味わいを持つことを指します。
実は、この「アーシーな風味」は賛否が分かれることもあります。
それは、質の悪いマンデリンも質の良いマンデリンも「アーシーな風味」と表現されるので、良い印象を抱かない人たちも多いからです。
質の悪いマンデリンは枯れ草のような渋みに繋がる苦味があります。
質の良いマンデリンはハーブのようにスッキリとした、でも微かに優しい苦味を感じます。
意外と当たり外れが多いので、マンデリンの銘柄名だけで商品を購入するのは注意が必要です。
トレーサビリティ(詳細な情報)が優れている、または信用できるお店で購入することをおすすめします。
まとめ
スマトラ式のコーヒーは、インドネシアのスマトラ島で特有の製法によって作られるコーヒーです。
この製法の最大の特徴は、コーヒー豆が完全に乾燥する前に外皮を取り除く点にあります。
具体的には、水分値が約50%残った状態の生豆でこの作業を行います。
独特の風味の秘密
この製法が生み出す最も顕著な特徴は、その独特なスパイシーでハーブのような風味です。
この風味は、特定の土壌条件、気候、そしてこの独自の製法によって形成されます。
特に、水分を多く含んだ状態での脱穀が、この独特の風味を強調しています。
品質管理
スマトラ式のコーヒーは、品質管理が非常に重要です。水分の多い状態での脱穀は、豆が傷つきやすく、品質が劣化しやすいためです。
そのため、熟練したピッカーによる手作業での選別(ハンドピック)が不可欠です。
日本での人気
この独特の風味は、日本でも長い間多くのコーヒー愛好者に愛されています。
スパイシーでハーブのような風味は、多様な食文化とも相性が良く、その人気は高まる一方です。
総じて、スマトラ式のコーヒーはその製法と独特の風味で独自の地位を築いています。
この製法がもたらす風味の深みと複雑性は、コーヒー愛好者にとって新たな発見と喜びを提供しています。