比較的新しい精製方法のアナエロビックファーメンテーション。
コーヒー好きな方なら、もうすでに聞き慣れた言葉かもしれません。
世界中のスペシャルティコーヒーを取り扱う様な農園の多くが、アナエロビック発酵を行うための施設や設備を増やしています。
つまり、単なる一過性のブームではなくナチュラル・ウォッシュドにならんで定番の精製方法になりつつあるのです。
今回はそんなアナエロビックファーメンテーションの味わいや魅力に迫っていきたいと思います。
以下の方は当記事をチェックして頂けると有益かもしれません。
・コーヒー愛好家:コーヒーの風味や品質に深い関心を持ち、新しい味わいや特別なコーヒー体験を求めているコーヒー愛好家。
・バリスタやカフェ経営者:顧客に独特なコーヒーを提供したり、業界の最新トレンドを追いかけているバリスタやカフェ経営者。
アナエロビック・ファーメンテーションはコーヒーの精製処理方法
冒頭でも紹介しましたが、アナエロビック・ファーメンテーション(以下アナエロビックと略します。)はコーヒーの精製処理方法です。
今では世界中のスペシャルティコーヒーを取り扱う様な農園の多くが、アナエロビック発酵を行うための施設や設備を増やしています。
具体的にはコロンビア、ブラジル、コスタリカ、ニカラグア、エチオピア、中国などの国々。
これらの国々では、スペシャルティコーヒー市場における競争力を高めるために、独特な風味プロファイルを持つ高品質のコーヒー豆の生産に注力しています。
日本語に直すと嫌気性発酵
アナエロビックファーメンテーションとは、日本語に直すと嫌気性発酵です。
この嫌気性発酵、元々はワインなどでよく見られる手法のひとつですが、収穫したコーヒーチェリーを密閉された容器に入れて、酸素がない環境で働く微生物により発酵させる方法です。
これにより従来のコーヒーとは違う独特な味わいやフレーバーを作り出すことができます。
一方、好気性発酵はナチュラルやウォッシュトで採用されている通常の発酵プロセスです。酸素に触れることで活動することができる微生物の働きで発酵をさせています。
バリエーションの豊富さが特徴
アナエロビック発酵後のコーヒー豆の加工方法には、様々なバリエーションがあります。
発酵後にウォッシュトプロセスを施すと「アナエロビック・ウォッシュト」と呼ばれ、ナチュラルプロセスを適用すると「アナエロビック・ナチュラル」となります。
更には「ダブルアナエロビック・ファーメンテーション」と呼ばれ、二度にわたり嫌気性発酵を行う方法もあります。
これらのようにアナエロビックは発酵後の加工で異なる風味を作ることができ、その多様性に特徴があります。
従来の精製方法との比較
従来のコーヒー精製方法には、主にウォッシュド(水洗い)、ナチュラル(天日乾燥)、ハニー(半乾燥)などがあります。これらの方法はそれぞれ異なる特徴を持ち、コーヒーの風味に大きく影響します。
ウォッシュド精製法:この手法では、コーヒーチェリーの果肉を機械的に取り除いた後、水に浸して発酵させます。このプロセスは明瞭でクリーンな風味プロファイルを生み出し、酸味とフルーティーさを強調します。
ナチュラル精製法:ナチュラル精製では、果肉を取り除かずに豆を天日乾燥させます。この方法は豆に果実味と甘みを与え、フルボディの風味を生み出します。
ハニー精製法:ハニー精製では、果肉の一部を豆に残して乾燥させます。これにより、ナチュラルとウォッシュドの中間的な風味が生まれ、甘みと酸味のバランスが取れた味わいが特徴です。
アナエロビック精製法は、これらの従来の方法と比較して、更に複雑で独特の風味プロファイルを豆に与えることができます。
アナエロビックの工程
収穫と選別 | 成熟したコーヒーチェリーを収穫し、品質に基づいて選別します。 |
密閉容器での発酵 | 選別されたチェリーまたは脱果した豆を密閉容器に入れます。これにより、酸素を排除し、アナエロビック(無酸素)環境を作り出します。 |
温度と時間の管理 | 発酵過程での温度と時間を厳密に管理します。発酵時間は数日から数週間に及ぶことがあり、この期間中、豆は独特の風味がつきます。 |
洗浄と乾燥 | 発酵が完了したら、豆を容器から取り出し、必要に応じて洗浄します。その後、豆を天日乾燥または機械乾燥させます。 |
味わいの特徴は?
アナエロビックで精製されたコーヒーは、通常のコーヒーとは異なる独特なフレーバーやまろやかさがあります。
・フルーツの様なフレーバー
・まろやかな質感
フルーツの様なフレーバー
フレーバーにはパパイヤのトロピカルな味わい、カカオやスイートシダーの深み、ナツメグのスパイシーさが含まれ、オレンジ、シェリー酒の風味も感じられます。
まろやかな質感
フルーツの様な甘みが飲み口を滑らかにし、余韻も長く残るためまろやかな質感です。
今まで飲んだ中では中国のアナエロビックが一番の衝撃
私が今まで飲んだアナエロビックで一番の衝撃は中国の雲南『ダブルアナエロビック・ファーメンテーション』でした。
ダブルアナエロビック・ファーメンテーションは、言葉の通り、二度にわたり嫌気性発酵を行う方法です。
そのため、より発酵の強い質感になるのが特徴です。
当時、アナエロビックについてあまり知らなかったので『精製方法でここまで違いが出るのか』と驚きました。
まず、焙煎直後から部屋中にコーヒー豆の芳醇な香りが広がり、今までに無いコーヒーの香りだったので衝撃を受けました。
飲む前から期待はしてたのですが、やはりその味わいはとても美味しく、完熟ベリーやブラックチェリーのような甘味とラム酒やブランデーのような芳醇な香りを感じました。
少し・・というかかなり個性的なので好き嫌いがわかれそうですが、私はとてもお気に入りです。
そのまま飲んでも美味しいのですが、ブレンドにしても味のアクセントになって面白いかもしれません。
アナエロビックの誕生地はコスタリカ
アナエロビック誕生地はコスタリカであることをご存知ですか。
しかも、驚くべきことにアナエロビックは研究所や国がバックアップした施設などではなく、民間企業の1人の社員によって実現されました。
上記の写真はアナエロビックを開発したエステバンさんです。
スペシャルティーコーヒーの定義を自分なりに解釈し、品種やテロワールにこだわること無く人為的に素晴らしいコーヒーを作れないかと試行錯誤したそうです。
周りと違う考え方をしてみることが好きで『どうしていけないのか』『やってみたらどうなるだろう』と常に楽しみながら開発に至ったそうです。
なんともその姿勢がとても素晴らしく、もう感服です。
アナエロビック精製法の問題点
スペシャルティコーヒー界隈に衝撃を与えたアナエロビックですが、いくつかの難しい事情があります。
・高額な初期投資が必要
アナエロビック精製法の導入には、高額な初期投資が必要です。そのため、この手法は主に資金力のある大規模農園や、革新的な取り組みを行う小規模農家に限られています。経済的に恵まれない地域では、これらの設備を導入することが困難です。
・管理が非常に難しく、深い知識と高度な技術を持った人材が求められる
アナエロビックの精製は発酵槽内の温度コントロールや無酸素状態の維持など精密な管理が求められます。このプロセスは非常に複雑で、わずかなミスが発酵の過程を妨げ、最高品質のコーヒーの損失につながるリスクがあります。さらに、発酵度合いの微妙な変化が風味に大きく影響するため、安定したクオリティーを維持するのは困難です。これらの課題に対処するには、深い知識と高度な技術を備えた専門家が不可欠です。
今後の発展
現代のコーヒー業界では、特別な風味を求めるスペシャルティコーヒーの人気が高まっています。このトレンドに伴い、アナエロビック精製法の需要も増加していることが見込まれます。
特にスペシャルティコーヒー市場では、アナエロビック精製法で生産されたコーヒーが高い評価を受け、プレミアムな商品としての地位を確立しています。この方法は、コーヒーの風味と品質に新たな次元をもたらし、消費者に多彩な味の選択肢を提供しています。これは、コーヒー産業における持続的な革新と探求の象徴であり、今後もその動向が注目されます。
まとめ
アナエロビックファーメンテーションは比較的新しい精製方法です。
味わいの特徴は
・フルーツの様なフレーバー
・まろやかな質感
現在でもスペシャルティコーヒーの人気が高まっており、このトレンドに伴い、アナエロビック精製法の需要も増加していることが見込まれます。
更には、アナエロビック精製法で生産されたコーヒーは高い評価を受けており、プレミアムな商品としての地位を確立しています。
当店でも美味しいアナエロビックのコーヒーを見つけたら積極的に商品にしようと思いますので今後ともチェックをお願いいたします。
ここまでのご精読ありがとうございました。